2017年日本マレーシア倶楽部懇親会開催

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日馬倶楽部懇親会2017

去る、6月9日(金)午後6時30分より、日本マレーシア倶楽部夏季懇親会がいつものコートヤード・マリオット銀座東武ホテル「芙蓉」で開催されました。
総合司会をつとめる大川善輝理事により、夏季懇親会の開会宣言がされると同時に、懇親会第一部としての講演会が始まりました。

日馬倶楽部懇親会」2017

大川理事による司会進行

 

今回は、公益財団法人 フォーリン・プレスセンター理事長、元国連事務次長の赤阪清隆氏に“「アジアの世紀」は本当に来るのか?”をテーマにお話をいただきました。

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フォーリン・プレスセンター理事長・元国連事務次長
赤阪清隆氏

講演要旨は次の通りです。
(注)赤阪氏の略歴及び講演時に使用したスライド(PPT)がご覧になれます。
下記URLにアクセスしファイルのチェックボックスをチェックしてダウンロードしてください。
https://s.mypocket.ntt.com/FuX5X9

世界は今まで、「競争」「科学の進歩」「法の支配」「近代医学」「消費者社会」「労働倫理と貯蓄」といった要因が作用して、特に戦後はアメリカが主導して、いわゆる西洋文明が覇権をとってきた。

しかし近年、「アメリカの相対的パワーは減少し、中国やインドといった国々が種々の分野でグローバル・プレイヤーとなる」(ファリード・ザカリヤ)や「共通の利益と価値観を持った国々の集まりたる西洋は、今瀕死の状態だ・・・」(マーティン・ウルフ)と表されたように西洋文明の覇権に陰りが見えてきているようである。

アメリカが支えてきた共通の価値観や共通の制度は、イスラミック・ステート、金 正恩、プーチン、習 近平、アサド、ムガベ、アル・バシー、そしてドナルド・トランプ等の現行の秩序への挑戦者が現れてその存在が危ぶまれている。

これからの世界はどうなるのか?という疑問に、「グローバル・リーダーシップは存在せず、多くの国々が局地的、地域的な問題にしか取り組まない」(イアン・ブレマー)、「もはや米国でも、中国でも、アジアでもない、誰の世紀でもない、誰にも属さない世紀になり、世界秩序を守るリーダーは居なくなる」(チャールズ・カプチャン)と予測している。
それを裏付けるように米国大統領ドナルド・トランプは次のように表明している「今日から今後は、ただひたすらアメリカ第一、アメリカ第一です。」

 

日馬倶楽部懇親会2017

テーマ:「アジアの世紀」は本当に来るのか?

 

では、アジアはどうなるのか?

ここで、「アジアの価値」とは何かを考えるとき、1980年代に、リークアンユーやマハティールが目指したアジアが得意とする次の点を挙げることができる。

「個人よりも共同体の利益を優先」「公衆道徳、社会の調和、チームワーク」「謙譲、自制、自己犠牲、敬老、勤勉」「経済の繁栄、進歩、調和、法と秩序」「政府の役割、温情主義的権威」「文化多元主義」「自然との共生、人間の欲望の制御」といったものである。

これに対し、アジアの金融危機を契機に「個人の自由、人権の軽視」「パターナリズム(父権主義)」「市場メカニズムへの干渉」といったアジアの価値批判が巻き起こった。

ところで、私は、嘗て在マレーシア日本大使館で勤務した経験があるが、ここで「マレーシアの価値」に触れてみたいと思う。
それは、「寛容性」「多様性」「融通性」「家族愛」「親密性(フレンドリネス)」といったものである。

マレーシアやアジアの人間関係は、西洋の冷たい人間関係とは全く異なるものである。
「寛容性」については、“マレーシアの持つ寛容性は色々な面で参考になるのではないか” (2017年4月17日付朝日新聞デジタル)と、本年4月にマレーシア訪問を終えた皇太子が記者団に語られたお言葉で触れられている。

 

日馬倶楽部懇親会2017

熱心に聞き入る参加者

さて、私たちは、何を求めてグローバル社会を生きるのか?

これまでは、米国に代表される「仕事」「所得」「資産」「消費・浪費」「自然破壊」といった“飽くなき欲望”を求めてきたのではないか?
これからは、ロバート・スキデルスキー(英国教授)が示すように、“良い暮らし”すなわち、「健康」「生活の安定」「尊敬」「人格または自己の確立」「自然との調和」「友情」「余暇」などを求めるのではないか?

良い暮らしを皆で実現するという考えは、アジアから出る可能性が大いにあると思う。
また、世界に広げたい普遍性のあるアジアの価値は十分にあると思う。
日中韓協力の実現、アジアの安全保障体制の確立、アジアの自由貿易圏の実現、共通のアジアの価値の醸成など、条件が整えば「アジアの世紀」は来ると確信している。

我が日本は、「環境」「保健」「教育」「防災」の分野でアジア・イニシアチブを取ることができると思う。

私は、経済だけでなく良い暮らしを皆で実現するというような内容のあるものを伴った「アジアの世紀」が来ると確信している(了)。

講演後、赤阪氏は私たちに次のようなコメントを寄せられました。

「アジアの世紀」なんてものは来ないという米欧の学者もいますが、アジアの経済力はもうすぐ世界のGDPの5割を超えるでしょうし、条件が整えば「アジアの世紀」を実体のあるものにすることも可能と信じます。再びアジアの価値論を議論しうる時期が近づいている気がします。

6月6日(火)の日経新聞は、同社が主催の「アジアの未来」シンポジウムで、ベトナムのグエン・スアン・フック首相が以下のようなスピーチをしたと伝えています。わが意を得たり、の思いです。

「(グローバル化がもたらした種々の課題に対処するため)かつてシンガポールのリー・クアンユー元首相が指摘したように、勤勉、教育熱心、家族の連帯といったアジア的な価値観を守り、広めることでアジアのソフトパワーを強めることも重要だ・・・国の大小や人種、性別と関係なく、誰もが「アジアの夢」を語れる将来は必ず訪れると信じている」。
懇親会第二部は、町田博淳 理事長の挨拶に続き、スライドを使った当倶楽部の活動報告がなされました。
続いて、倶楽部発足以来長年にわたって積極的な会員活動をされてきた一花 稔氏の乾杯のご発声によって懇親会がスタートしました。

 

日馬倶楽部懇親会2017

挨拶と活動報告を行う町田博淳理事長

赤阪氏の講演に刺激された参加者で満たされた会場は、「アジアの世紀は、もうすぐそこまできている」とのポジティブな気持ちと充実感に包まれた素晴らしい交歓の場となりました。

歓談途中、初参加の出頭則行氏(元電通執行役員・九大教授)、一丁田真理子氏(社会保険労務士/料理研究家)に司会者がインタビューを行い、教育コンサルタントの(株)サマディの方々、アジア文化協会主催の日本語スピーチコンテストでグランプリを受賞した留学生の方々、マレーシアに生産、販売拠点を持つ産業用フィルター専門メーカーのロキグループ岡崎眞人氏、前回の懇親忘年会で講演をいただいた相川敬子氏(経産省)など多くの方々からショートスピーチを頂きました。

日馬倶楽部懇親会2017

初参加の諸橋大介氏(右)小菅将太氏(中央)
浅沼宏一氏(左)いずれも(株)サマディ

 

日馬倶楽部懇親会2017

Ms. Chang Ai Ting Aliceさん(左)
Ms. Young Pengさん(中央)
篠塚景一氏(右/アジア文化協会)

 

日馬倶楽部懇親会207-17

相川敬子氏(左/経産省)
岡崎眞人氏(右/ロキグループ)

 

宴も後半を迎え、開始から立ち通しで疲れたと思っている方や日頃運動不足に陥って硬くなった体をほぐそうと思っている方に向けて、子供たちに体幹遊びを通じて勉強・スポーツを向上させよう。その為には、体幹を鍛えて美しい姿勢を作ろう。と提唱し普及運動を行っているマナーキッズ・プロジェクトの代表を務める田中日出男さんのリードで、参加者全員が腕や腰を伸ばしたり縮めたり、楽しく体と心のリフレッシュをはかりました。

 

日馬倶楽部懇親会2017

田中日出男氏(マナーキッズプロジェクト)

 

日馬倶楽部懇親会2017

みんな体を動かしてリフレッシュ

いつの間にか、楽しい会話と笑顔に満ちた懇親会は、あっという間に中締めを迎えました。
恒例により、西田重信理事に登壇願い、中締めを行っていただく事になりました。

日馬倶楽部懇親会2017

西田重信理事による中締め

 

日馬倶楽部懇親会2017

“一丁締め”でお開き

今回は、手締め後に拍手など一切行わない「よぉーい ポン」のみの動作だけを行う「一丁締め」で、午後9時前に懇親会はめでたくお開きとなりました。

 

 

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日本マレーシア倶楽部の特徴

当倶楽部は、 日本とマレーシアの友好親善を推進することを旨として有益な情報やイベントに参加できる機会を提供する個人参加が基本の宗教や信条を問わない不偏不党を基本とした会員一人一人の意志と善意に基づく団体です。
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